nananaの長いお話

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人に物事を説明するときは、明確にそして簡潔にまとめなさいと、学校の先生や会社の上司からよく注意されたものですが、nananaのやろうとしていることを皆様にご理解していただくためには、それらを一度忘れなくてはなりません。

 

nananaのコンセプトである「パンづくりは森づくり。」

殆どの方が、なんでパンと森なの?と感じることでしょう。このお話をするためには、皆様のお時間を少し多めにお借りすることが必要になってくるのです。中途半端には出来ないのです。

 

コンセプトが分かりづらいとは何事かと、またまた先生や上司に怒られてしまいそうですが、物事が「?」から始まるのもたまには悪くない。そう思っていただけたら幸いです。

 

薪窯nananaが産まれるまでの物語。よろしかったらお付き合いください。

 

 

【日本の森林問題に関わりたい】

 

日本は緑が多く、美味しい食べ物がたくさんあって、家庭の水が安心して飲む事のできる、自然に恵まれた国ではないかと思います。

 

そんな中で、日本の森林が深刻な問題を抱えている現状を、皆さんはご存知でしょうか。

 

「森林率」という言葉があります。

国の土地に対して、森林がどのくらいの割合で存在しているかを表す言葉ですが、日本の森林率は66%。国の7割ほどの土地が森であることになります。

これは1位のフィンランド72.9%、2位のスウェーデン68.7%に次ぐ第3位という、世界でも有数の森林国といえるものです。ちなみに世界の森林率の平均は30%くらいです。

 

ここまで聞くと、なんだ日本すごいじゃないか!で終わりそうですが、本題はここから。

 

日本には「人工林」というものが存在しています。森を切り拓いて、人が意図的に杉やヒノキ、松などの針葉樹を植えて100年以上かけて育てていこうという、いわば「木の畑」のようなものです。その人工林は、日本の森の約4割。半分近い割合がその畑になっていることになります。

 

畑で野菜を育てる時、はじめに種を多めに蒔いて、少し成長してきたら良いものを残していくために「間引き」をしますよね。では、いろいろな事情からその間引きが出来なかったら。。やせ細った野菜が密集するような状態が想像できると思います。

 

この野菜を人工林に置き換えたようなことが、日本の森林では起きているのです。

痩せた木が高く伸びて育ち、その木々が密集している地面には陽の光が入らず、低い位置に植生するはずの草や木は成長できないため、動物たちに必要な木の実も育たない。。

 

ここ数年、クマやイノシシ、シカなどが人里へ降りてくる目撃情報や被害情報が目立ちますが、人工林の問題も影響していると言われています。

それに加えて、痩せた木々は根も細く、大雨の際には人工林一帯が崩れて流れてしまうような土砂災害が起きている地域もあります。

 

では、なぜそのようなことになってしまったのか。

 

人工林の目的を一言でいえば、「建築材料の生産」です。

日本の建築は木造が多いので、建築材をはじめとした木材という資源を、国内で生産しようという考えから人工林の管理が始まったのですが、安価な外国の木材が大量に輸入されるようになってから、国産材の需要は減っていくことになります。

 

そうなると林業従事者の方達も仕事が減り、仕事が減ると森の管理も滞ってしまう。結果として管理の行き届かない人工林が全国に拡がっている。。これが日本の森の現状の一つです。

 

一般的に、森林保全と聞いて頭に浮かぶのは「植林」ではないかと思いますが、今の日本の森林で優先しなければならないことは、程よく間引いて木を伐る「間伐(かんばつ)」という作業です。でも木材需要が少ない。。

 

 

【森と人を繋げるようなパン屋】

 

nananaをつくった中田は数年前、日本の森林の現状を知りたくて、森林組合や森林保全のNPO、家具工房、森林の学校、動物保護のNPO、木質バイオマス発電所、などなど、、自分が気になった場所へお邪魔しました。森林に関わっている現場の方々から直接お話を伺うことで、本当のところ何が問題なのか、その問題に対して自分がどう関わっていけるのか、そんなことを考えながら5ヶ月ほど日本を周ってみました。

 

そんな中で私は、長野県の山奥にある一軒のパン屋さんに出会います。

そのパン屋さんでは、森林整備で伐った木、いわゆる間伐材を薪として買い取り、それを石窯の燃料にしてパンを焼いていました。

 

窯の中で静かに大きく揺れる炎、窯から出てくる大きなパン、薪とパンの焼ける香り。こんな幸せな時間や商品を提供できる仕事は他に無いのではないか。。

 

自分の中で揺さぶられる何かを感じ始めた時でした。

 

ものづくりの仕事はしていたけれど飲食に関わったことはなく、ましてパンなどは全く焼いた事のない私でしたが、時間が経つごとに答えはパン屋にあると確信を持てるようになり、これはやってみるしかないと動き始めたのです。

 

私が、森林に関わる現場の方々のお話を伺った中で、全体的に感じたのが「情報発信がうまく一般の方にまで伝わっていないのでは?」ということでした。

 

全国には、熱心に森林保全や林業活動、森に関わる仕事をされている方が多くいらっしゃいます。そして、ホームページや講演会、野外活動などを通して、一般の方々との交流を大切にされているのですが、現状を多くの方に伝えていくのは難しいというお話を聞きますし、私もそう感じることがありました。

 

実際、私の友人や先輩後輩の中に、日本の森について知っている方はほとんど居ませんでした。そもそも、普段から森林について考えることなんてないよね。というのが普通の感覚であり、私自身も興味を持つまでは当然同じような状態でした。

でもそれはつまり、以前の自分のような森に興味のない方々に伝える手段を考える必要があるということです。

 

ではどうするか。

自分の日常から外れたものには、どうしたって関心が向かないのは当然です。

でもパンには興味がある、食べてみたら美味い、どうやら薪窯で焼いているらしい、なになに「パンづくりは森づくり。」だと?どういうこっちゃ。。

 

このように、皆さんの日常に少しでも関われることが出来たなら、そこから森への興味も持ってもらえるのではと、薪窯のパン屋にはそんな可能性があると、私は魅力を感じずには居られなかったのです。

 

森に興味が無かったとしても、nananaのパンを食べてくださった時点で、森林保全に貢献されている事になります。

森のため、環境のためだからといって成り立つようなやり方は違うかなと感じています。

パンが美味しいから食べる、それが森に良い影響を与えている。。本来はこのような形で循環していくべき物事であってほしいと考えています。

 

なので、パンづくりも当然本気です。

何かを伝えるためには、その手段も全力でないと伝わらないのです。

 

北海道産の小麦粉や米を使い、自家製酵母で長時間発酵、薪窯の大きな熱によって短時間で焼き上げるパンは、余計な水分を逃さずにしっとりもっちりとした仕上がりです。

種類はとても少ないけれど、それぞれを充分に楽しんでいただけるパンをつくっていきます。

 

間伐材を積極的に使用しながら、日常の生活から離れてしまいがちな森と、自然の恩恵を忘れてしまいがちな私たちを少しでも繋げるような、そんなパン屋を目指していきたいと考えています。

 

最後まで読んでくださりありがとうございました。

 

 

薪窯nanana

中田竜明